野菜の力薬として食された「ごぼう」◆vol.38,銀座 フレンチ 銀座エスコフィエ

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『ゴボウ』

~日本で食用とされる“薬になる根菜”~

 

●プロフィール

[分類]キク科

[原産地]ユーラシア大陸北部

[和名]牛蒡

[おいしい時期()]101

[主な栄養成分]イヌリン、リグニン、タンニン、クロロゲン酸、カリウム、カルシウム、マグネシウム、葉酸など

          

●見分け方

持ったときに張りがあり、ピンとしているもの。

弾力があり、太さがある程度均一で、先端が緩やかに細くなっているもの。

ひげ根が少ないもの。

表面にひび割れや黒ずみがあったり、先端がしおれているものは避ける。

太すぎず適度な太さのもの。

※一般的なごぼうは、太すぎると中にス(空洞)が入っていることがある。(ただし大浦ごぼうや堀川ごぼう等の品種は太くてずっしりしたものが良品)

土付きの方が日持ちしやすく、風味も損なわれにくい。

 

●保存方法

乾燥に弱いので、土付きのものは新聞紙で包んで冷暗所に保存する。

ただし夏場は傷みやすいので適当な長さにカットして水洗いし、ラップに包んで冷蔵庫の野菜室に入れたほうが安心。使いかけのものもラップに包んで冷蔵庫の野菜室に入れます。

土付きは1週間程度、洗ったものは23日に使いきる。

一度に使い切れないときは、ささがきにしたものを軽くゆでてしっかりと水気を切り、保存用袋などに入れて冷凍保存を。

 

新ゴボウは日持ちせず風味が落ちやすいので、ポリ袋やラップなどで密封して冷蔵庫へ。早めに食べ切ること。

 

●ゴボウのヒミツ

ごぼうを食用としているのは日本のほか台湾や韓国など一部。漢方では「悪実」と書かれ、利尿作用や化膿止めの効果があるといわれている。

ごぼうは長く肥大した根の部分を食用とする。長さによって「短根種」と「長根種」に大別され、短根種は3050cmくらい、長根種は70cm1mほど。関東地方は土がやわらかいので長いごぼうの栽培に適しており、西日本は土がかためなので短根種が多い傾向がある。

ごぼうの原産地はユーラシア大陸北部といわれていて、ヨーロッパからシベリア、中国東北部にかけての広範囲に野生種が分布している。中国では古くから野生のごぼうを薬用として使っていた歴史がある。

ごぼうがいつ日本に伝わったのかは明らかではないが、一説には縄文時代だともいわれている。しばらくは中国と同じく薬用として用いられていたが、平安時代後期には食用にもされていたようである。平安時代の書物「本草和名」や「和名抄(わみょうしょう)」には「キタキス」という名前で登場し、平安時代の終わり頃には宮廷の献立のひとつにもなっていた記録が。江戸時代になると全国に広く普及し、品種も改良されていった。

 

主な産地は青森県で、次いで茨城と北海道。この三つの地方で全国の半分以上を生産している。そのほか、千葉や宮崎、群馬など。

滝川ごぼうなど関東を中心に栽培されている長いものは晩秋から冬が旬。一方、初夏には夏ごぼうとも呼ばれる新ごぼうの旬で、柔らかく香りが良いので違った味わいが楽しめる。関西では若ごぼうと呼ばれる葉ごぼうを食べる食文化もあり、これは春先に旬を迎える。

 

●ゴボウの健康パワー

期待される効能

便秘改善、高血圧予防、風邪予防、貧血予防、生活習慣病予防など

食物繊維が豊富に含まれる。食物繊維に含まれる炭水化物の一種「イヌリン」は腸の働きを整え、血糖値の上昇を抑える作用があり、また不溶性食物繊維の「リグニン」もコレステロール値を抑制する作用や、腸のぜん動運動を活発にさせる作用が期待できる。そのため便秘解消や大腸がん予防などに効果的。

ごぼうには強い抗酸化作用のある「タンニン」や「クロロゲン酸」などのポリフェノールが多く含まれ、免疫力の向上や老化予防などに効果が期待できる。風邪予防や美肌に効果的。

高血圧予防やむくみの改善に効果的なカリウム、骨粗しょう症予防に効果的なカルシウムなどのミネラルも含有。

貧血予防によいとされる葉酸も含まれる。

 

●ゴボウの楽しみ方・食べ方

煮物、炒め物、揚げ物など

風味やうまみは皮の部分に多く含まれる、皮はむくのではなく、タワシや包丁の背で軽くこそぐ程度にするとよい。

ごぼうを水にさらすと水が黒くなるが、これはごぼうから流出したポリフェノールによるもの。水にさらさずそのまま調理したほうが栄養分をしっかり摂れるが、白く仕上げたい場合は、変色を防ぐために切ったら水か酢水にさらすとよい。

ごぼうの切り方は千切りや斜め切りなどのほか、鉛筆を削るようにそぐ「ささがき」が一般的。包丁でのささがきが苦手な場合は、ピーラーを使えば簡単にできる。

定番メニューといえばきんぴら。油との相性も良く、ニンジンとの組み合わせは鉄板。ささがき、細切り、存在感を活かして太めに切るなど、切り方次第で様々な食感が楽しめる。

鍋や煮物や材料にも向く。特に鶏肉との相性は抜群。筑前煮やきりたんぽ鍋などには欠かせない。

和風のお味噌汁、洋風のスープやポタージュなど汁物にも利用できる。

堀川ゴボウなど中心が空洞になっているものは、丸くくり貫いて詰め物をした料理などに用いられる。

肉、魚の臭みを消す作用があるので、一緒に煮込んだり、炒めたりするとよい。肉・魚料理の付け合わせとしてソテーや素揚げを添えても。

ゴボウサラダの場合は一度さっとゆでてから和える。ゴボウを細切りにしてさっと酢水にさらし、鍋で水から火にかけ茹でる。沸騰してから3分ほど、しっかりと歯触りが残る程度でザルにあげて冷まし、他の材料や調味料と合わせる。

 

●ゴボウの仲間たち

ごぼう(一般的な長根種)

8090㎝ほどでスラリと細長い形が特徴。店頭では品種による区別はあまりされていないが、「柳川理想」や「渡辺早生」などの品種がある。現在流通している長根種の多くが「滝野川ごぼう」の系統。

 

滝野川ごぼう

長さ1m前後、直径2~3cmほど。長根種の代表品種で、現在多く出回っている長根種の元になったごぼう。1700年頃から現在の東京都北区滝野川地域で栽培されていたので、その名が付いたといわれている。根がやわらかく味がよい。現在も関東地方を中心に作られている。

 

新ごぼう

46月頃に出回り、色白で細い。長さは3040cmほどで皮が薄く食感がやわらかいのが特徴。香りがよくサラダや揚げ物、煮物のほか、柳川鍋にも使われる。おもに九州地方で栽培が行われている。

 

葉ごぼう・若ごぼう

おもに関西で出回り、ごぼうの若い葉柄(軸)と小さな根を食べる。香りがよくやわらかく、シャリシャリとした食感が特徴。クセがないのでお浸しや天ぷらなど幅広い料理に使える。福井県で栽培されている「越前白茎ごぼう」が有名で、大阪府八尾市や香川県でも作られている。八尾市で作られたものは「若ごぼう」とも呼ばれる。3月〜5月頃が旬。

 

大浦ごぼう

千葉県匝瑳市大浦地区の特産で、江戸時代以前から栽培されていたといわれる歴史のあるごぼう。長さは60cmほど、直径は太いものだと10cmにもなる短根種。太い根は中に空洞があり、その空洞を使って肉詰め料理などもできる。大浦地区で伝統的に栽培されているものは、成田山新勝寺にすべて奉納されるため市場には出回らず、本種と市販されている「大浦ごぼう(大浦太ごぼう)」とは区別されている。

 

堀川ごぼう

京都の伝統野菜の1つで、長さ50cm前後、直径が68cmにもなる太い短根種。先端がタコの足のように枝分かれしていて、中心部に空洞があるのが特徴。栽培途中で横向きに植え替えるという独特の方法により、独特な太いごぼうに育つ。特有の香りがあってやわらかく、煮物や詰め物に適している。現在生産量は少ない。

 

サルフィシィ

「西洋ごぼう」ともいわれるヨーロッパ原産のキク科の野菜。日本のごぼうに似ているが別種。長さは2030cmくらいと短く、肉質はやわらかめ。皮をむくと中は白く、フランスやドイツなどでは煮込み料理やスープ、グラタン、付け合わせなどに使われる。