野菜の力疲労回復には「ネギ」◆vol.37,銀座 フレンチ 銀座エスコフィエ

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『ネギ』

~体を温め、疲労回復を促す薬用野菜~

 

●プロフィール

[分類]ヒガンバナ科

(クロンキスト体系ではユリ科とされていたが、APG植物分類体系ではヒガンバナ科ネギ亜科ネギ属に分類される)

[原産地]中国西部、中央アジア北部

[和名]

[おいしい時期()]113

[主な栄養成分] βカロテン、ビタミンC、ビタミンK、葉酸、カルシウム、カリウム、硫化アリル

 

●見分け方

「根深ネギ」は全体にみずみずしく、白い部分が長くて光沢のあるもの。白い部分と緑の部分の境目がはっきりしているもの。白い部分は巻きがしっかりと固くふかふかしていないもの。

「葉ネギ」は、葉先に枯れがなく、根元から葉先までまっすぐで青みが濃いもの。根がしっかりしているもの。

「根深ネギ」も「葉ネギ」も、葉先までピンとしてハリがあるものがおすすめ。よく生育しているねぎは、葉の部分がロウのようなもので覆われ白い粉を吹いているように見えるものがある。

 

●保存方法

「根深ネギ」は新聞紙で包み、冷暗所で立てて保存。泥付きの場合は泥を付けたまま新聞紙で包む。

使いかけの場合は、白と緑の部分で切り分けてからラップで包むかポリ袋に入れ、冷蔵庫の野菜室で保存する。

「葉ネギ」は、湿らせた新聞紙に包んで冷蔵庫の野菜室で保存。

また、両方とも、みじん切りや小口切りにして冷凍しておけば、薬味などにすぐに使えて便利。

 

※年末になるとよくみかける束にした泥つきの根深ねぎ。
洗ったネギより泥つきねぎのほうが日もちがよく、さらに土の中に埋めておけば、春頃まで長期保存も可能。

 

●ネギのヒミツ

日本には奈良時代に伝わったとされ、古くから全国で栽培されてきた歴史ある野菜。白い部分(葉鞘)を食べる「根深ネギ(長ネギ・白ネギ)」と、緑色の葉の部分が多く、先端部まで食べられるやわらかい「葉ネギ(青ネギ)」に分類できる。

 

かつては、「東の長ネギ、西の青ネギ」と呼ばれ、東日本では千住ネギに代表される根深ネギ、西日本では九条ネギに代表される葉ネギが食べられてきた。その違いはそれぞれの食文化に影響を与えたが、現在はどちらも流通しており用途によって使い分けられている。

 

どちらも食べる部分は「葉」にあたるが、白ねぎは深いところまで土寄せをして日に当たらないようにすることで白い部分が多くなるように育てられる。特有の香りがあり、生食すると辛みがあるが、煮込むと甘くとろりとした口当たりになる。 

一方、西日本で多く食べられてきたのが「葉ねぎ」。緑色の部分が多く、先端まで食べられる。やわらかく、香りや風味、彩りがよいのが特徴。

 

どちらも通年出回るが、おいしくなるのは「根深ネギ」が冬、「葉ネギ」は春といわれている。

 

豆知識・・・奈良時代・平安時代、ネギは「キ」と呼ばれていたため、宮中の女官の間では「一文字」というのが通称だった。熊本の郷土料理「ひともじのグルグル」はネギを茹でてグルグルと巻き、味噌をかけたもの。

 

●ネギの健康パワー

緑黄色野菜に分類される緑色の部分には、カロテン、ビタミンC、カルシウムなどが豊富。白い部分に多く含まれる香り成分、硫化アリルの一種「アリシン」は、消化液の分泌を促して食欲を増進させるほか、ビタミンB1の吸収を助け、疲労回復を促進する効果が期待できる。疲労回復効果を高めるなら、ビタミンB1が豊富な豚肉などとあわせると理想的。さらに抗菌、殺菌作用など様々な働き、体温を高めて血行を促進させる効果もあり、旬の時期の体の健康維持に役立つ。

また緑色の部分を食べる葉ネギ(青ネギ)には血液の凝固や骨の形成に関わるビタミンKと、血液を作る働きのある葉酸も多く含まれ、効率的に摂取できる。

 

原産地の中国では、紀元前から栽培され、特有の辛み成分には体をあたため、疲労を回復する効果があるため、薬用植物として珍重されていたといわれている。焼きネギ湿布やネギ湯など、風邪対策の民間療法としても古くから利用されてきた。

 

☆期待される効能

風邪予防、貧血予防、がん予防、高血圧予防、心筋梗塞予防、脳梗塞予防、動脈硬化予防

 

●ネギの楽しみ方・食べ方

炒め物、鍋料理、煮物、焼き物、薬味など

加熱して使う場合は、とくに下ごしらえなどは必要ない。よく洗ってから根を切り落として調理する。薬味として生で使う場合は、刻んでから水にさらすと辛さが和ぐ。繊細な見た目と口当たりを活かしたいなら、千切りにして白髪ねぎに。

※白髪ねぎ・・・煮物や焼き物のあしらいなどに使われる白髪ねぎは、根深ネギ(白ネギ)の白い部分を5㎝ほどの長さに切り、切り込みを入れて開き、端から極細切りにしたもの。水にさらしてほぐしてから使う

 

「根深ネギ」は、辛みや香りを楽しみたいなら生で薬味などに、甘みやとろりとした食感を味わいたいなら加熱調理すると、異なる美味しさが堪能できる。「根深ネギ」はもともとは冬野菜だが、旬以外の時期も一定の出荷量があり、通年私たちの食生活に欠かせない重要な野菜。めん類・豆腐などの薬味、汁物、炒め物、すきやきなどの鍋物、煮物などに用いられ、家庭消費のほか、外食産業でも年間を通じて、安定して使われている。

乾燥した刻みネギ、冷凍の刻みネギなども需要を伸ばしている。

根深ネギの緑の部分、葉ネギに含まれるカロテンは脂溶性ビタミンのため、油と調理することで体内での吸収が高まり、効率よく摂取できる。油で炒めたり、かき揚げ等の揚げ物にするのがおすすめ。

根深ネギの緑色の部分はかたくて捨ててしまいがちだが、ビタミンやミネラルが豊富なので活用するとよい。細かく刻んでみそ汁に、かき揚げやネギ焼きに、納豆などの薬味に、味噌で油炒めにしてご飯のお供に、しょう油に漬けてネギだれとして、また肉の煮込み料理やスープ作りにも。

硫化アリルの一種アリシンは疲労回復を促進するビタミンB1の吸収を高めるため、ビタミンB1が豊富な豚肉などとあわせると、スタミナアップに効果的。ネギには肉や魚の臭みをやわらげる効果もあるので、相性が良い。

カモとネギ・・・「鴨がネギをしょってくる」というのは、鴨鍋の材料(鴨肉とネギ)が一度に揃うことから、大変好都合であること、願ってもないこと、を意味する。鴨鍋はもちろんのこと、鴨とネギを炒めた鴨ネギ、蕎麦のつけ汁として人気の鴨汁など様々な合わせ料理がある。

ネギとマグロ・・・「ねぎま」というと、焼き鳥でおなじみの、鶏肉とねぎを交互に刺した串を思い浮かべる人が多いが、もともとは、ネギとマグロのぶつ切りを、しょうゆ味で煮た鍋物や汁物ことだった。マグロの赤みの残りの部分を利用して煮た、庶民の味で親しまれてきた。使われるねぎは根深ネギ(白ネギ)で、漢字で書くと「葱鮪」。

長ネギの「ひげ根」は、素揚げにして食べることができる。食べやすい長さに切って、きつね色になるまで揚げたら、軽く塩を振って食べると美味。

 

●ネギの仲間たち

日本全国で通年栽培されるが、東日本では根深ネギ、西日本では葉ネギを中心に、日常的に多様な品種を楽しめる。

 

【千住ねぎ(せんじゅ)】

根深ネギ(長ネギ、白ネギ)の代表種。土寄せして軟白させるので白い部分が長いが、葉肉はかため。生では辛味と香りをいかして主に薬味として利用される。加熱すると甘くトロリとした食感に変化するため、鍋料理や炒め物、煮物などにむいている。


【 九条ねぎ 】

京都特産の葉ねぎ。緑の部分が長く、やわらかく風味がよい。薬味や関西うどんの具のほか、ぬたなどの和え物、鍋物やお好み焼きなどに利用される。九条太と九条細がある。

※参考

・九条太ネギ(九条太)

葉肉が長くて柔らかい葉ねぎを代表する品種。青ねぎともよばれる。京都九条が主産地であったが、今では西日本で広く栽培されている。鍋物や煮物に。

・九条細ネギ(九条細)

九条ねぎの系統で、葉肉が薄くて柔らかい。九条太より株分かれが多く、710本にもなる。薬味に最適。湯豆腐やしゃぶしゃぶのたれにも。


【下仁田ねぎ】

群馬県下仁田町特産。短めで太く、肉質がやわらかい。加熱すると独特のまろやかな甘みがあり、鍋物や煮物などの加熱調理に向いている。徳川幕府に献上して天下一とほめられ、殿様ねぎとも。

 

【越津ねぎ】

愛知県津島市越津が発祥。軟白用栽培に適し、白根を特に長くすることができる。葉部もやわらかく葉ねぎとしても利用される。


【小ねぎ】

青ねぎを若採りしたもので、博多万能ねぎが有名。やわらかく、色も美しく、薬味やぬた、汁の実として適している。

 

【博多万能ねぎ】

福岡県産のブランド品で、九条細系を若どりした葉ねぎ。ビニールハウスの中で季節によって品種を変えて栽培し、年間を通じて出荷している。やわらかく使い勝手が良い点、品質管理がよいことでも人気に。薬味や汁物、ぬたなどの和え物に。

 

【あさつき】

ねぎの仲間だが、いわゆる「青ねぎ」とは別の種類。細くて緑色の部分が多く、別名「糸ねぎ」ともいわれる。色が薄く、辛みは強い。薬味や麺類に最適。見た目が万能ねぎやわけぎと似ている。

 

【わけぎ】

ネギとタマネギ(シャロット)が交雑したもの。おもに西日本で栽培。70cmくらいの長さで緑色の部分が多く、見た目は青ねぎやあさつきに似ている。葉先までやわらかくて、辛味や香りはそれほど強くなく、薬味や炒め物などに使われる。名の由来は「わけぎ」は枝分かれ(株分かれ)が多く、分けとる葱という意味で「分葱」から。


【 リーキ 】

ポロねぎともいわれる西洋種。にんにくやにらのように葉が平ら。刺激臭は弱い。白ねぎを太く短くした形で、根元の白い茎の部分のみを食用にする。加熱するとねっとりとして甘みがでる。やわらかく香りがよく、グラタンや煮込みやスープに向いている。